夏の暑さ対策として塗装を検討すると、必ずといっていいほど「遮熱塗装」と「断熱塗装」という2つの言葉に出会います。名前も謳い文句もよく似ているため、どちらを選べばよいか迷う方は少なくありません。この記事では、
①仕組みの違い
②効果が出やすい建物の条件
③データで見る実際の温度変化
④用途・気候に応じた選び方の基準
という4つの観点から、根拠となるデータとともに整理します。読み終える頃には、営業トークだけに頼らず、自分の建物に合った塗装を判断できるようになります。
「屋根や外壁の塗り替えを機に、遮熱塗料や断熱塗料を勧められたが、違いがよく分からないまま契約してしまった」という声は珍しくありません。実際、この2つの塗料は見た目にはほとんど区別がつかず、カタログの謳い文句も「夏は涼しく、冬は暖かい」といった似た表現が並びます。しかし仕組みが異なれば、効果が出やすい建物の条件も変わります。たとえば金属屋根の工場・倉庫と、屋根裏にすでに断熱材が入っている木造住宅とでは、同じ塗料を使っても体感できる効果に差が出ることがあります。違いを理解しないまま選んでしまうと、「思ったほど涼しくならなかった」という不満につながりかねません。
株式会社IESは京都市下京区を拠点に、空調・電気・管工事、塗装・大規模修繕工事、FA事業・省人化設備、補助金申請サポート、省エネコンサルタントまで手がけています。塗装単体の提案ではなく、空調設備の知見も踏まえたうえで「その建物にとって遮熱と断熱のどちらが効果的か」を検討できる点が特徴です。本記事も、特定の実績数値を誇張することなく、一般的に確認できる技術的な仕組みとデータに基づいて解説します。
遮熱塗料と断熱塗料は何が違うのか
熱の伝わり方の基本(伝導・対流・放射)
建物への熱の伝わり方は、大きく分けて「伝導」「対流」「放射」の3種類があります。太陽光は主に「放射」というかたちで屋根や外壁に届き、そこから内部へは「伝導」というかたちで熱が伝わっていきます。この2つの経路のどちらに対策するかで、塗料の性格が分かれます。
遮熱塗料のしくみ:日射反射率を高める
遮熱塗料は、太陽光に含まれる近赤外領域の光を反射することで、そもそも屋根や外壁の表面温度が上がりにくくする塗料です。この反射性能を示す指標が「日射反射率」で、一般に塗膜の色が明るいほど反射率は高くなる傾向があります。表面温度の上昇そのものを抑えるため、直射日光が強く当たる金属屋根の工場・倉庫などで効果を体感しやすいのが特徴です。
断熱塗料のしくみ:熱伝導率を下げる
一方の断熱塗料は、塗膜自体の熱の伝わりやすさ(熱伝導率)を下げることで、外の熱が室内に伝わるのを遅らせる塗料です。熱伝導率は「W/m・K」という単位で表され、数値が小さいほど熱を伝えにくいことを意味します。太陽が出ていない夜間や、外気との温度差が大きい冬場でも一定の効果を発揮しやすい点が、遮熱塗料との違いです。
比較表で見る違い
観点 | 遮熱塗料 | 断熱塗料 |
|---|---|---|
基本原理 | 太陽光(放射熱)を反射する | 塗膜自体の熱伝導を抑える |
効果が出やすい場面 | 日射が強い日中、直射日光の当たる屋根面 | 日射の有無にかかわらず、外気との温度差がある時間帯 |
効果が出やすい建物 | 金属屋根の工場・倉庫など、表面温度が上がりやすい建物 | 断熱材が入っていない、または劣化している建物 |
色による影響 | 受けやすい(明るい色ほど日射反射率が高い傾向) | 受けにくい |
冬場の効果 | 限定的(日射がある時間帯に限られる) | 比較的発揮しやすい(熱を逃がしにくくする効果も期待できる) |
データで見る効果
一般社団法人日本塗料工業会は、遮熱塗料が建物表面の日射熱の吸収を抑え、ヒートアイランド対策や省エネに寄与する塗料として位置づけていると案内しています(参考文献1)。また、倉庫の屋根に遮熱塗料を塗装して効果を検証した事例では、施工後に屋根表面で最大13℃、室内温度で最大4℃の差が確認されたと報告されています(参考文献2)。
これらのデータからも分かるように、遮熱塗料の効果は「屋根表面の温度上昇をどれだけ抑えられるか」という観点で測定されることが多く、直射日光が強く当たる屋根ほど効果を実感しやすい傾向があります。一方で断熱塗料は、表面温度そのものよりも「室内に熱がどれだけ伝わりにくくなるか」に着目した対策であるため、同じ条件で単純比較できるデータは限られます。数値は施工条件(下地の状態、塗料の種類、計測時の気象条件など)によって変動するため、あくまで目安として捉えることが大切です。
どちらを選ぶべきか:判断の基準
結論から言えば、「屋根の表面温度そのものを下げたいか」「室内への熱の伝わり方を遅くしたいか」という目的の違いで選ぶのが基本です。加えて、次のような建物側の条件も判断材料になります。
- 屋根材の種類:金属屋根やスレート屋根など、表面温度が上がりやすい屋根は遮熱塗料の効果を体感しやすい傾向があります。
- 既存の断熱材の有無:屋根裏や壁内にすでに断熱材が入っている住宅では、断熱塗料を重ねても効果の伸びしろが小さい場合があります。
- 建物の用途:工場・倉庫のように日中の屋根表面温度が空調負荷に直結する建物は遮熱塗料、住宅のように朝晩の冷え込みや結露も気になる建物は断熱塗料が候補になりやすいです。
- 地域の気候:夏の日射が強い地域か、一年を通じて寒暖差が大きい地域かで、重視すべき効果が変わります。
導入前に確認したいチェックリスト
実際に検討する際は、次の項目を業者に確認・相談することをおすすめします。
- 現在の屋根材・外壁材の種類と劣化状況
- 屋根裏や壁内の断熱材の有無・劣化状況
- 建物の主な用途(居住用か、工場・倉庫などの作業用か)
- 夏場・冬場それぞれで困っていること(室温の上昇か、冷え込みか)
- 塗料メーカーが公表している日射反射率・熱伝導率などの性能データ
- 施工後のメンテナンス周期と耐用年数の目安
- 補助金・助成制度の対象になるかどうか
特に6の補助金については、自治体によって遮熱・断熱塗装が省エネ改修として対象になるケースがあるため、事前の情報収集が無駄な出費を防ぐポイントになります。
まとめて確認:よくある質問
Q. 遮熱塗料と断熱塗料を両方使うことはできますか?
A. 遮熱性能と断熱性能を兼ね備えた塗料も存在しますが、性能を謳う数値の測定条件は製品によって異なります。導入を検討する際は、メーカーが公表しているデータの測定条件まで確認することをおすすめします。
Q. 冬は断熱塗料の方が絶対に良いのでしょうか?
A. 断熱塗料は熱を伝えにくくする性質上、冬場に室内の熱を逃がしにくくする効果も期待できるとされていますが、既存の断熱材の状態や建物の気密性によって体感は変わります。総合的な判断が必要です。
Q. 色によって効果は変わりますか?
A. 遮熱塗料は日射反射率が塗膜の明度の影響を受けやすいため、色による効果の差が比較的出やすいとされています。断熱塗料は熱伝導を抑える仕組みのため、色による影響は受けにくいとされています。
ご自宅や事業所の屋根材、断熱材の有無について、正確に把握できているでしょうか。「言われてみれば分からない」という方は、次の一歩として一度現地調査を受けてみることをおすすめします。屋根に上って表面の劣化状況を確認するだけでも、遮熱・断熱どちらが適しているかの手がかりが見つかることがあります。もしよろしければ、皆様の建物の屋根材や、夏・冬それぞれで感じている悩みをコメントで教えてください。
以前の記事「夏の冷房費が下がらない理由と屋根の表面温度の関係」でも、屋根表面温度と冷房負荷の関係について取り上げています。今回の遮熱・断熱の違いとあわせて読むと、夏場の暑さ対策への理解がより深まります。
株式会社IESでは、遮熱塗装・雨漏り修繕・結露防止塗装の3つを中心に、建物の状態や用途に応じた塗装のご提案を行っています。特に遮熱塗装は、屋根材の種類や日射条件を踏まえたうえで、本当に効果を見込めるかどうかを含めてご相談いただけます。ご自身の建物にどちらが適しているか判断がつかない場合は、無理に契約を急がず、まずは公式サイト(https://ies-japan.co.jp/)から現地調査のご相談をいただくことをおすすめします。
本記事は株式会社IES(京都市下京区、空調・電気・管・塗装・大規模修繕工事、FA事業・省人化設備、補助金申請サポート、省エネコンサルタント)が執筆しました。屋根や外壁の暑さ対策・結露対策でお悩みの際は、下記のお問い合わせ先までお気軽にご連絡ください。
お問い合わせ:ies-kyoto@ies-japan.co.jp
参考文献・出典
- 一般社団法人日本塗料工業会「省エネ・ヒートアイランド対策・地球温暖化防止・簡単施工・耐久性向上 夏を快適に、さらに省エネ。遮熱塗料」 URL: https://www.toryo.or.jp/jp/anzen/reflect/reflect-leaflet-2025.pdf 参照日: 2026年8月14日
- 株式会社エスエヌケー「遮熱塗料を応用した熱負荷低減技術」(倉庫における遮熱塗料の施工効果検証資料) URL: https://www.snk.co.jp/Portals/0/images/service/renewal/proposal/shanetsu.pdf 参照日: 2026年8月14日
- ちば住宅コープ「日射反射率とは?高めるメリット・デメリットを徹底解説」 URL: https://www.cjcoop.or.jp/column/reform/550/ 参照日: 2026年8月14日